もっと上の女優を目指すために、左足を機械に変えたい。
そう小林愛里が僕に言ったのは、バベルの斜塔の稽古が2週間も経った時でした。
入団したばかりで更に大統領師匠唯一の女優という事もあり、彼女なりに頑張らねばならぬという思いもあったのだと思います。彼女の瞳はいつになく真剣でした。
でも何も左足を機械にしなくてもと、さすがの僕も言いました。
そもそも足を機械にして、演技、上手くなるの?と、そこももちろん聞きました。
すると小林は「なります!私が知っている大女優は大竹しのぶさんも、トリンドル玲奈さんもみんな台詞を言う時左足で目一杯、人間とは思えぬ程のパワーで踏み込むんです!だから、踏み込む力をアップさせるために左足を機械化したいんです!」
僕を見つめる小林の真摯な眼差しに、遂に僕も折れました。「わかった、行って来い。機械化、して来い」と言いました。演出の熊坂さんは黙って頷き、遊佐も「機械化手術費は助成金で何とかする」と言っています。
かくして彼女は左足を機械化する為に、〇野クリニックへ旅立ちました。
3日後…僕と遊佐と熊坂さんは、帰って来た小林の姿を見て愕然としました、松葉杖姿ではありませんか。「兄さん方、ほんますんまへん!うち、やられてしまいましたわ!」
小林は怒りに身を震わせ中途半端な関西弁になっていました。余程悔しかったのでしょう。
「ホンマやられましたわ!術後は半年間絶対安静やって……すんまへん!左足、つかいもんにならんくなってしまいましてん!!」
絶句しました。本番は2週間後です、とても間に合いそうにありません。
まさか、せっかく機械化したのに半年間も絶対安静になってしまうなんて……。
小林愛里の出演を楽しみにして下さっていた皆様、本当に申し訳ございません。
次回こそは機械化された小林共々、新生大統領師匠を皆様にお見せできるかと思います。
どうか、どうか、ご期待下さい。
大統領師匠の大統領 中田真弘

錯乱した中田君は面白おかしく書いておりますが、内容としては大体あっており、新メンバーである小林愛里が稽古中にアキレス腱を断裂する大怪我を負いました。
小林愛里の出演を楽しみにしてくださっていたお客様、並びに関係者の皆様には心よりお詫び申し上げます。
今回のことを受けまして、急遽、常松花穂さん(劇団S.W.A.T!)にご出演をお願いすることとなりました。急な話にもかかわらず、また大統領師匠とほとんど面識がないにもかかわらず、出演を快諾していただきましたこと、どれだけ感謝の言葉を並べても足りるものではありません。
ピンチの後にはチャンスあり。
演劇界において大変な逆風が吹き荒れている昨今ですが、最強の助っ人を得て、僕たちは最強の作品を作り上げます。
お客様におかれましては、安心してご来場くださいますよう、改めてお願い申し上げます。
大統領師匠の師匠 遊佐邦博

上記発表に伴い、ご希望のお客様に関しては払い戻しをさせていただきます。 お手数ですが、お問い合わせもしくは下記メールアドレス宛にご連絡くださいませ。
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